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【映画】あの新作、見逃していませんか?(2月公開)【すばらしき世界】

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 Contents: 

 

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🎬 Introduction: 

本当に早いもので、3月も折り返しを迎えました。

個人的には仕事で繁忙期に突入し、ここ1ヶ月ほどで疲れも溜まってまいりましたが、

趣味だけは絶対に諦めない!と心に決めていますので、週に1度は劇場に足を運んでいます。

 

先週末は、ある作品を目当てにららぽーと横浜のTOHOシネマズまで行ってきました。

「シンエヴァ」の人気は物凄いですね。場内が人で一杯になっているのを見るのは久しぶりで、映画ファンとしては心踊る光景でした。

(残念ながら筆者はエヴァ童貞であるため、劇場の熱狂を味わうにとどまりました。)

 

強く惹かれる作品さえあれば、もう人々は劇場に飛び込むことを厭わない。

「映画」という娯楽が、新型ウイルスのもたらす不安に打ち勝つ日がやって来たのです!

昨年惜しくも公開延期となってしまった作品が、今年の上映スケジュールに続々と戻ってきているのも嬉しい限り。

 

そんな状況に感化されたこともあり、今回の記事ではリアルタイムで上映中の作品を取り上げることとしました。2月に公開され、おそらくはもう間も無く上映終了となってしまう作品なので、今更感は拭えないのですがw

 

 

 『すばらしき世界』Under The Open Sky (2021)

普段は邦画のチェックが不足気味の筆者も、「これは必ず劇場で観なくては」と心待ちにしていた1本です。

公開は先月11日でしたので、もう1ヶ月以上が経っています…が、大手シネコンを中心に現在も上映中!上映終了まであと1週、長くて2週か… ?

 

Trailer : 

youtu.be

 

Story :

殺人を犯し13年の刑期を終えた三上は、目まぐるしく変化する社会からすっかり取り残され、身元引受人の弁護士・庄司らの助けを借りながら自立を目指していた。そんなある日、生き別れた母を探す三上に、若手テレビディレクターの津乃田とやり手のプロデューサーの吉澤が近づいてくる。彼らは、社会に適応しようとあがきながら、生き別れた母親を捜す三上の姿を感動ドキュメンタリーに仕立て上げようとしていたが……。(出典:映画.com)

 

Staff :

●監督/脚本:西川美和

www.imdb.com

蛇イチゴ」(03)

「ゆれる」(06)

「ディア・ドクター」(09)

夢売るふたり」(12)

永い言い訳」(16)

 

●原案:佐木隆三「身分帳」

 

Cast : 

役所広司 as 三上正夫

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日本を代表するベテランアクター。本作での演技も高く評価され、昨年10月のシカゴ国際映画祭(インターナショナルコンペ部門)にて「ベストパフォーマンス賞」(=最優秀演技賞)を獲得したことが話題になりました。なお本作は、同映画祭にて「観客賞」との2冠を果たしています。

この度彼が演じたのは、人生の多くを刑務所で過ごした"元殺人犯"。世の理不尽を許容できない者が抱える”生き辛さ”を、説得力のあるパフォーマンスで表現しています。

 

仲野太賀 as 津乃田龍太郎

www.imdb.com

 

長澤まさみ as 吉澤遥

www.imdb.com

 

橋爪功 as 庄司勉

 

六角精児 as 松本良介

 

 

🎬 西川美和 監督最新作!: 

個人的な意見ではありますが、日本にはあまり「監督で映画を観る」風潮が根付いていないのではないかと思います。

 

例えばハリウッド。スコセッシやタランティーノの新作がリリースされるとなると、それらは「スコセッシの新作」「タランティーノの新作」として宣伝され、公開前から人々の注目を集めます。彼らは巨匠中の巨匠だから当然、という意見もあるでしょうが、その他、(一定の人気を集める)数多くのディレクターの作品に関しても同様です。

すなわち、映画をPRする段階から「誰が撮ったのか」(もしくは「誰が書いたのか」)にスポットが当てられることが多く、必然的に大衆の注目もそこに集まるわけです。

 

対して現在の日本業界では、(予告編やチラシを見る限り)「誰が演るのか」をプッシュするのが配給側のセオリーのようで、「○○主演最新作」といったPRの仕方が主流。

監督で作品を選ぶ観客はおそらく多くはないでしょう。

 

あくまでそうした傾向が見られるというだけで、決してその是非を論じるつもりはありません。

 

前置きが長くなりましたが、今回取り上げた「すばらしき世界」で監督・脚本を務めた西川美和(敬称略)は先に述べた傾向に反して、今や日本映画において新作を期待される、すなわち、ひとたび新作が世に出ると「西川美和監督最新作」と大々的に歌われる、数少ない映画監督の1人だと言えます。

 

 

では、なぜこの監督が特別なのか?

 

それは独自の作家性に由来します。

この「作家性」という言葉、我々映画ファン界隈ではクリエイターの特性を論じるときによく使われるもので、その意図するところの曖昧さ故に筆者はあまり好きではないのですが、

彼女は事実、作家なのだから仕方ありません。

 

西川監督は、デビュー当初より自身による原案・オリジナル脚本に基づいた作品を撮るというスタンスを貫いてきました

星の数ほど脚本家がいるハリウッドでも"Based on True Events (この作品は実際の出来事に基づく)"が主流となっているこのご時世に、です。

 

この時点で既に、彼女が稀有なフィルムメイカーであることは自明。

作品群に対する世間の評価の高さもそれをしっかりと証明しています。

 

筆者もデビュー作「蛇イチゴ」を除いて、西川監督の長編作品は一通りチェックしておりますが、

いずれの作品をとっても、細部へのこだわり、とりわけ人物描写の入れ込み様に関しては量産型日本映画の比ではありません。どのキャラクターにも、ただならぬ愛着が滲んでいる。

 

そして最新作「すばらしき世界」は、そんな特別な作品が出揃う中でも異彩を放つ1本となりました。

というのも、本作はオリジナルにこだわってきた西川監督が(長編映画作品で)初めて挑んだ「原作モノ」であるからです。

 

原作は、直木賞作家 佐木龍三による「身分帳」。実在の人物を題材にしたノンフィクション小説だといいます。

 

舞台を現代に置き換えるという大胆なアレンジがなされた他、主人公の人物像に関してもある程度デフォルメが加えられているそうですが、

やはり特筆すべきは、監督がこれまでのスタンスを逸れてまで、このタイミングでこの物語を映像化したという事実

 

その理由は、一度作品をご覧になればきっとお分かりいただけるかと思います。

 

 

🎬 の「すばらしき世界」で: 

本作の見どころ

主人公である三上という男は、前科10犯の元殺人犯という筋金入りのワル。人生の盛りも終える頃に娑婆に放り出され、今度こそ堅気に戻ると誓いを立てます。

 

しかし、良くも悪くも世の中は彼のような前科者に甘くはありません。非正規の仕事ひとつ手に入れるにもイバラの道。

「並一通り」が良しとされる世界で、レールを踏み外した彼は圧倒的に社会的弱者なのです

 

加えて三上は、その強面の奥に、曲がった事を許せないという強い正義感を秘めています。

観客の想像に違わず、時に不条理な「建前」を要求する社会との間にはどうしたって摩擦が生じる。

 

 

暴力と正義という「矛盾」を抱えた男が、いかにして実社会と折り合いをつけていくのか

その点も本作のテーマの1つです。

 

 

このように書くと極めてシリアスな社会派作品のようですが、特に中盤はコミカルなやり取りも多く、全体として非常に見やすく仕上がっています◎

 

 

タイトルに込められた意味

本作において西川監督は、悪事を犯してきた三上の生き方と、彼をはねつけようとする社会のあり様のいずれをも裁くことをしません

 

代わりに、三上や津乃田の視点を通して、観客に

「「我々が生きる現代の社会は、『すばらしき世界』なのか?」」

 と問いかけることに終始します。

 

作品のタイトル=「すばらしき世界」には、器の小さな世の中に対する皮肉が込められているという解釈もできるでしょう。

しかし筆者個人としては、このタイトルが文字通り世の中の素晴らしさに光を当てたものだと強調したいと思います

 

正直者がなかなか報われない世の中は、確かに生きづらい。生きづらいけれど、

本作の英題=”Under The Open Sky”が鮮やかに意識されるラストシーンでは、おそらく観客の誰もが、この世に生を受ける「すばらしさ」を痛いほどに感じることでしょう

 

 

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🎬 Outro :

先月、筆者がこの「すばらしき世界」を鑑賞した回は平日昼間だったこともあり、観客は20人前後、シルバー率高めとなっておりましたが、 

終盤はあちこちから鼻をすする音が聞こえていました。無論、筆者もその一人ですw

 

 

「シンエヴァ」がグングンと興収をあげる中、本作もまだ細々と上映が続いています。

 

三上のフィルターを通したこの世界が、いかに「すばらしい」か。

機会があれば劇場で、是非多くの方に見届けて欲しいと思います。

きっとそれは特別な映画体験になると、筆者は確信しております。

 

 

おしまい。