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【映画】この身体が爆ぜる日まで【スポンティニアス】

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 Contents:

 

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🎬 Introduction: 世界は新たな局面へ

世界が新型ウイルスとの闘いを始めてから、早いものでおよそ1年が経ちます。

 

昨年の春と比べると、街を行く人の姿が随分と増え、世間全体に「免疫」がついてきたのを感じますね。

事実、特効薬こそないものの、医療現場に置ける治療法は確実に改善されていると聞きます。敵について少しずつ明らかになるにつれ、以前の暮らしを取り戻そうという動きが勢いを増しているのは確かでしょう。

(医療従事者の方々の働きには頭が上がりません。)

 

他方、単純に警戒心が薄れたと見える側面もあります。

時間帯や場所によっては、「ソーシャルディスタンス」なる概念が完全に形骸化しているシーンも多々。マスクが単なる飾り物にしか見えないことも少なくありません。

 

いずれにせよ、突如猛威を振るったこのウイルスの存在により、人々の生活は新たなフェーズに突入しました。

見えざる敵と闘いながら生きることを余儀なくされた我々はいま、どのようなマインドで日々をやり過ごせば良いのか。

 

今回は、その問いに(意図せず)1つの答えを提示するコメディ作品=「スポンティニアス」を取り上げます。

 

 

『スポンティニアス』Spontaneous (2020)

 

www.imdb.com

ティーンエイジャーのラブストーリーを中心に据えながら、一風変わった設定が目を引く一品。ロマコメ作品には珍しく、全編を通して血糊マシマシです。

 

☆「スポンティニアス」は2021年2月27日現在、Itunesその他で有料配信中。

 

Trailer : 

youtu.be

 

Story :

マーラ(キャサリン・ラングフォード)の通う高校で、ある日突然、女子学生の身体が爆発し、木っ端微塵になる事件が発生。怪現象はその後も他の学生を襲い、町中が混乱に飲み込まれる。やがて公的機関による調査が始まったことで学生達は隔離され、マーラも家族と離れて過ごすことを余儀無くされた。いつ自分の身に悲劇が降り掛かるかわからない緊迫した状況の中、マーラは同級生のディラン(チャーリー・プラマー)と急接近。やがて恋仲になった2人は、残りの高校生活をどうにか生き残りたいと願うが・・。

 

Staff : 

●監督・脚本:ブライアン・ダフィールド

「ダイバージェントNEO 」(15)や「ジェーン」(15)の脚本に参加していたそうで、本作にて監督デビュー。

 

●原作:アーロン・スターマー

 

Cast : 

キャサリン・ラングフォード as マーラ・カーライル

www.imdb.com

「ナイヴズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」(19)

「13の理由」(ドラマシリーズ:17-18)

「Love, サイモン 17歳の告白」(18)

着々とキャリアを積み上げている若手注目株ですね。本作でその存在感を確かなものにしたのではないでしょうか。

 

チャーリー・プラマー as ディラン・ホヴメイヤー

www.imdb.com

「荒野にて」(17)

ゲティ家の身代金」(17)

庶民的な風貌に親しみが持てる期待のアクター。「荒野にて」での好演が記憶に新しいです。

 

 

🎬 ジけティーンたち:

「爆発」が生み出すリアル

タイトルの「スポンティニアス」spontaneousとは、「自発的な、任意の」という意味。

本作において、卒業を間近に控えた学生達の身体が突如爆発する様を指しています。

 

身体が内側から破裂するなんてどんな奇病だろうと思いますが、その理由や仕組みについては一切説明されません。コメディだと割り切って見ることができない視聴者が忍耐力を試されるタイプの作品ですね。

映画の中で何か不可解なことが起こるとき、果たして「それが何を象徴するのか」に注目して見るのがオススメです。その解釈が的を射ていようとなかろうと、その作品をより踏み込んで楽めることに違いはないからです。我々映画ファン達は日々、意味深な演出を見かけては「これは○○のメタファーだ」と嬉々として語りますw

 

本作でフィーチャーされるこの奇病も、何かを象徴しているのでしょうか?

いずれにせよ、「いつ爆発するか分からない」恐怖が、若者達のドラマの推進力として機能していることは確かです。

 

明日には死ぬかもしれないからと、以前からマーラを意識していたディランは彼女に声をかけ、これをきっかけに2人の距離は急速に縮まっていきます。これはある種の「吊り橋効果」で、彼らの感情の動きに必然性をもたらしています。

そして、2人に残された時間がいかほどか分からないまま、果たしてこの恋がどこに着地するのか、我々視聴者は手に変な汗をかきながら見守るわけです。

 

本作が退屈なラブストーリーと一線を画するのは、奇病設定による切迫感と、2人のメロウなやりとりがバランスよく作品のリズムに緩急を作り出している点です。こんなにハラハラしながら見るラブストーリーは、他に類を見ないのではないでしょうか。

 

ちなみに、本作での人体爆発の描き方は極めてライトであり、直接的にその瞬間を映し出すようなカットはありません。グロ耐性に自信のない方も安心して楽しめるという親切設計がまたいいですね。

 

 

「爆発」は何のメタファーか?

さて、先に述べた「メタファー」の件ですが、本作においてこの奇病が何を象徴しているのかについて、無い頭を振り絞って考えてみました。

 

答えは1つに収束するものではないと思います。そもそも「答え」など存在しない。

それを承知の上で何点か指摘するならば、まず1つ目に、「ティーンエイジの儚さ」を挙げることができるでしょう。

当然のように大人に守られ、自分のやりたいことをやりたいようにできると言っても過言ではない10代。筆者自身も30代に突入し、あの数年間のボーナスステージのありがたみを懐かしく思います。また、その恵まれた時代をただ漫然と過ごした自分を許せませんw

マーラ達も事件以前はごく一般的なティーンエイジャーだったのでしょう。それが、自分の身体が時限爆弾を抱えているかもしれないと知り、能動的に行動するようになった。自分たちの「若さ」を認識するに至ったのです。

 

「若さ」は瞬く間に過ぎていく。体が爆発するという奇病が卒業を間近に控えたシニア学生のみに降りかかったことを見ても、それが漫然と大人になることを許してしまう彼らに対する警鐘であると解釈してもあながち間違いではないはず。

 

 

2点目に、爆発はシンプルに「予期できない死(病)」とイコールだという見方もあります。

ここで冒頭の話題に戻ると、本作に対して「この作品はまさしく今の世の中を映す鏡だ!」といった感想を持つ方も少なくないでしょう。おそらく製作期間はコロナ以前ではありますが、「爆発」はこの厳しい世相をピタリと予見したような設定です。

その点で、やや不謹慎な表現になりますが、「スポンティニアス」は図らずも時代の流れを味方につけた作品であると言えます。視聴者は知らずのうちに自分の生きる世界と作品の中の世界を重ねて見てしまうわけですから。

 

 

あるいは3点目、爆発という現象それ自体が、気性の激しい(多感な)ティーンエイジャーそのものを象徴していると見ても面白いですね。

 

こうした「メタファー」に関するトピックは、実際に作品を鑑賞した方ともシェアしたいところです。是非、あなたの考えを教えて欲しい。そこに映画鑑賞の大きな楽しみがある。心からそう思います。

 

 

 

🎬 命を憐れむのか、それとも:

では再び冒頭に戻って、

我々はこの作品から、どんな「答え」を学び取ることができるのか。

それは、作品の幕引きを飾る、マーラの独白にあります

 

ネタバレはしないという信条のもと、ここにそれを記載することは控えますが、

彼女のストレートな言葉は、ともすれば誰もが悲観的になってしまうような時代を生きる我々の助けになるでしょう。

 

今にも過ぎ去っていこうとする若さを、いつ終わりを迎えるかわからない一生を、理不尽な病気が蔓延する世の中を、

我々はただ嘆くだけなのか?自身の運命を憐れむだけなのか?

 

 

🎬 Outro: 

先述の通り、全編を通して血糊がふんだんに使われており、テイストはややダークに寄りますが、

後味が非常に爽やかで、多くの方にオススメしたい1本です。批評家受けが抜群であることにも大きく頷けます。

 

これが日本では劇場未公開!小規模のコメディ作品で目玉俳優の出演もないなら仕方ない、とは思うのですが、やはり映画ファンとしては寂しいところ。

 

現時点で有料配信のみであり、お手軽に見られる作品ではありませんが、

「見てみようか」とわずかでも興味を持っていただけたなら、これほど嬉しいことはありません。

 

 

おしまい。